2012年5月8日火曜日

アゴヒゲ店主と、妖艶タトゥーとターコイズ



 毎年恒例のドタバタ劇、幕張メッセどきどきフリーマーケットのブース出展も、御蔭様で無事に終わり、ホッと安堵の暇も無く、通常業務を粛々と邁進している今日この頃のワタクシでありますが、皆様は如何お過ごしでしょうか?ま、そんな事もどうでも良くてね、今回の話題の主役はワタクシの友人である、「片ヤン」(仮名)の話である。

片ヤン(仮名)は、ウチの常連のお客さんでね、知る人ぞ知る、自転車マニアでガンダムマニアで、何だかのすごいマニアである。自転車マニアだが、あまり自転車には乗らないのが大きな特徴である。でも、とても沢山の自転車を所有している事でも知られている。一人暮らしをしているオッサンだが、大量の自転車と同居している、珍種である。業界的にはそんな人ばかりなんですがね。

そんな片ヤン、イベントが大好き。ウチが開催するイベントには殆ど協力してくれるのだ。とても助かっちゃうのだが、今回のフリマにも3日間とも顔を出してくれていたのだ。スタッフは日替わりで交代勤務をするので、言わば3日間通しで通う片ヤンは、我々出店者側の貴重な情報ソースともなっており、貴重な存在なんである。

巨大なフリーマーケットであるから、多種多様なジャンルのモノが販売されているんだ。ジドウシャから自転車、絵画や書、その他諸々てんこ盛りな訳だ。そんな片ヤン、普段は何かに頓着するそぶりも無く、クールにイベントに参加していたりするのであるが、彼も悪い癖を持っており、一旦興味を持ってしまうと、極端にそっちへ話を持って行かれてしまう。普通の人が見ていたら、格好の「カモ」扱いなんだろうが…彼の場合はチョッと違うってのが面白かった。今回はそんなお話である。

さて、その片ヤンが一体、何に興味を持った(持たされた?)かって話である。それはね、「財布」である。有り体に云うと、「ウォレット」。ウォシュレットでは無い。世の中の男子は大体興味があったりするタイプのね、ハンドメイドのコンチョ付きウォレットタイプの、ごっつい感じの、アレだ。よくハーレーとかに乗っている人達がジャラジャラと持っている感じのね。彼曰く、当初は財布を物色しようとも何とも思っていなかったという。彼は初日店番をしていた私の所に来て、上気し顔を紅潮させ鼻を膨らませてそのウォレットを自慢げに見せびらかしに来たのだ。・・・子供かね?君は。

彼の手に有ったのは・・・ワニだ。ワニの皮膚。何じゃこりゃあ!って位、ワニ。鰐だよ。もワニ。熱川のバナナワニ園のワニよりも上質な感じのワニだ。そんなワニの皮膚で作ったウォレット。単純にすげぇ!って思った。
「なんだお前、そりゃあ」

「ワニです。ワハハ」

「ワハハじゃ無ぇ。幾らすんの?それ?」

「定価は78,000円位だそうです。」

「アフォか?で?幾らで買った?」

「え~ッと、フリマ価格が、32,000円でぇ、それを・・・」

「それを?」

22,000円って云われてぇ、」

「アフォか?で?」

「それをさらにご祝儀価格でぇ…」

「おぉ?」

18,000え~~~ん。」

マッタク、どっかの通販番組の社長じゃあ有るまいし、何を興奮気味に語っているのやら・・・。そんな子供染みた片ヤンなんである。でも、18,000円は正直安いと思った。ワニのワニ度が非常に良いと感じたからだ。

とまぁ、此処までは良くある話であるが、此処から先が在る所が、片ヤンの片ヤンたる所以である。このウォレット型の財布、ゴツくてデカイのが特徴だが、何かが足りない。彼もそれに気付いていた。それは二日目に成就される事となる。二日目はその財布とは全く別の店で、店主がどう見たって怪しい感じのタイ人って感じのメキシコ人である。そんな日本語片言な感じの親父に、少し妖艶な感じの日本人の奥さん。腕にタトゥが素敵に妖艶さを増幅している、そんな感じの素敵なお姉さんだ。

そこでもウォレットが売っているんだが・・・こっちは・・・多分海外ではウケるのかも知れないって感じの財布が沢山。まぁその内容は実際に行って見た方の判断や好みにお任せしておく事として、その店の展示品の半分は、現在希少となって来た、ターコイズを中心とした飾りモノである。そんなターコイズに何故か心を動かされている片ヤン。一体何がしたいのだ、片ヤン。

この妖艶なお姉さまのお店は、どう見てもタイ人にしか見えない、自称メキシカンと云う、如何にも怪しげな旦那が、貴金属やウォレットなんかの職人も兼ねていて、ウォレットの革ヒモなんかもその場で作ってくれたりするんだ。そんなお店をひやかしまくっているオヤジ臭・・・いやいやオヤジ衆である。そこで片ヤン自慢のワニのウォレットに穴開け加工と紐を施して貰い、悦に入る片ヤン。二日目で一応の完成を見た感じの様相を呈したワニである。二日目も通常店舗にて店番のワタクシに自慢しに来た。

「おう、今度は何だ?紐付けたんか」

「見てくださいよ、此処を加工して貰って、リベットは銀を使って貰って、紐その場で加工して貰って・・・」

「・・・幾ら?」

「此処に穴開けてぇ、純銀枠付けて貰ってぇ、紐付けてぇ・・・」

「・・・2,000え~~~~ん。」

だから、トーカ堂の北社長かっての、君は。

さて、いよいよ片ヤン御自慢の財布ってのも、完成形に成ったと思いきや、さに非ず。恐るべしはフリマの神通力とでも言うべきか、あまり興味の無いモノも、今後出会えるかどうかが解らないと言った、一点モノの、有る限り、とか、限定とかって話になってしまうんで、ある意味「買ったモン勝ち」的な要素と、何だか闇市的な面白さを含んでいるんだよね。会社のディーラーも出店してはいるが、普段煌びやかなショールームに展示してある外車を、光の少ない倉庫的なメッセへ持って来ても、バッタモンに見えかねないリスクと、翌日ショールームに行けば、ジドウシャが購入出来るし、大体、ジドウシャ、特に新型の外車なんぞは衝動買いなんかするシロモノでは無いんであるよ。

このあたりが、チョッと良さげなハンドメイドのウォレット、なんてぇシロモンは、まさにうってつけ、おあつらえ向けと云えよう。しかもその場でカスタム可能。おお?来年は自転車のカスタム屋なんかやるかな?安価なピストや、一般自転車とかのチェーンやグリップ、ペダルやカゴを好きなモノをチョイスして付ける、とかね。そんなショップやりたいなぁ。いやいや、話が逸れた。ウォレットの話しである。

正直、ソッチ系の雑誌なんかを見ても、驚くべき価格でハンドメイドウォレットが売っている。当然、ウォシュレット施工費なんかより遥かに高額である。二日目の片ヤンの動向は比較的沈静化していた様に見えたのだが、彼の瞳孔はもう一つの或るモノにロックオンされていたのである。それが何なのか?そのアンサーは、私がフリマの店番をする最終日に明らかとなったのである。

さて、私が当日片ヤンがウォレットを購入したであろう(早い時間であったので未だ彼は現地に来ていなかった)数件の店を一応チェックして見た。最終日だからか、彼が持っている、迫力が有るが、割と上品な感じの物品はなかなか無いんである。一応に凝った作りのワニ革や、定番の蛇革等々、所狭しと羅列陳列されているんである。こんなモン買ったら女房にどやされるわ、なんて苦笑しながら、それでも少し、片ヤンの買ったウォレットの完成度は高いんでは無いかと薄々感じ始めていたワタクシなんであるよ。

昼過ぎ、常連さんや鶴さん、ムロイちゃん、タワッチ達も続々来場し、彼等は並んでソレ系の店舗を巡回しているのだが、まるで繁華街の夜廻り、定時廻りをしている、ソッチ系の集団のそれに似ている。皆オッサンで体躯が良く、ギラついているからね。わはは。もう各店舗でも顔で、片ヤンなんぞ、最終日にはウォレットを購入した先の、アゴヒゲをたくわえた店主にハグまでされていたのだから、その歓迎っぷりが解ろうと云うモノである。その店で片ヤンとムロイちゃんは、しきりにターコイズの付いた、ズボンベルトのバックルを食い入るように見ていたんだ。ムロイちゃんがガン見していたのは、77,000円のプライスが下げられた、純銀にデッカイターコイズが付いたバックルだ。

何で突然ターコイズなんて言い出したんだろう?片ヤン曰く、世界中で、特に産地のアメリカや南米でターコイズが採れなくなっているんだってぇ事を、ワタクシに向かってアツく力説しているんだ。…一体全体、誰から吹き込まれているんだか知らんが、感化されるにも程が有るぞ、片ヤン。

散々アゴヒゲ店をひやかした挙句、今度は例の革ひもを作って貰った妖艶な美女と怪しげなタイ人風のメキシコ人の店へ。タイ人風メキシコ人店主のいでたちをひと目見て、「うゎ、こいつだ!」と、片ヤンの感化された先をワタクシは瞬時に悟ったのである。片手に缶ビールを持って、首には馬鹿馬鹿しい程の大きさの、でも適当に作っちゃいましたってぇ感じのする、ターコイズの首飾りをしていたのである。おおよそ片ヤンは、こいつにやられちゃっているんだ。

どうやら片ヤン、財布に止めてあるコンチョを、ターコイズ付きのモノにしたいらしく、妖艶タトゥーに、しきりに聞いているんだよね。例の、どう見ても海外ならウケるタイプの財布には、ターコイズ付きのそれが付いているんだからね、片ヤンとしては諦めきれなかったのだろう。だが、妖艶タトゥーには、ケンもホロロに首を横に振られるばかりであったのだ。

「此処にターコイズが付けば、オレの欲求は全て満たされるんですよ!」

片ヤンはそう言って、タイ人風メキシカンターコイズに食い下がった。ターコイズは酔いも回って来たのか、片ヤンに根負けしたのか、たどたどしい日本語で、

「アルヨ~、コンチョォ~。」

と、「コンチョォ、ナイアル。」みたいな、訳の解らない中国人みたいな言い回しで、コンチョを取り出した。きっとあまり売りたくなかった感じの古びて薄汚れ、年季の入った外国製のビニール袋から、(片ヤンにとって)お宝が、出て来たのだ。最後に出て来たのはいぶし銀になった感じのコンチョ台座に、乱暴だが、本当に天然石ってぇ、何ともイイ感じの石の付いた、多分ターコイズ店主にとっては秘蔵っ子であろう逸品を出してきた。ターコイズの持つジョーカー、若しくはエースカードであろう。最後の逸品に、片ヤンもロックオン状態である。ワタクシも傍から眺めていて、アレはイイな、でも、値段も結構だろうなぁ、なんて思っていた。聞くとターコイズが若かりし頃作成した逸品であると云う。なかなか値段を言わず、ビールを片手に天を仰いだりしている。片ヤンは、「コレ、イクラ?ハウマッチ?」とか言っている。ターコイズ、溜めに溜めた挙句、

「ン~~~、ゴセンエン。」

えぇ~~~~~!全員が驚愕の安さに絶叫する中、片ヤン即答で

「買う!買う!買う!ソレ、付けてオトーサン!」

妖艶タトゥーは「あら、出して呉れたの?良かったねぇ。」

なんて云っている。

こうして片ヤンは、全く買うつもりの無かったウォレットを購入し、即カスタムし、何の興味も無かった筈のターコイズまで購入する羽目になりましたとさ。でも、彼の買い物は痛快で面白く、影響力がとても強いのだ。人が馬鹿馬鹿しいってぇ事を、時には思い切ってやる、そんな片ヤンに感化されてかどうかは解らないけれど、鶴さんは片ヤンと同じ店で購入したとは思えない、大人しくシブい黒の二つ折りウォレットと、ターコイズオヤジの店で革ひもをワンオフで作成して貰っていて、留め金は三層メッキが施され、これまた秀逸なモノなんだが、これがさりげなくパンツのポケットに収まっていた。ムロイちゃんはターコイズでバックルを買い、俺様はターコイズで、ニシキヘビの骨のキーホルダーを買った。

ワタクシも実はウォレットを購入した。皆さんが多分存在すら気付かなかったであろう、店舗も持たない、若いが職人気質なお店で、派手な動物革のモノの隅に、コンチョすら付いていなかった、でも明らかに上質な牛革で出来た、大人しいウォレットを購入した。非常に満足している。

フリマ打上げの際、今回の片ヤン買い物の顛末を、文章にして呉れ、なんて言っていたから、面白がって書いてみたが、なるほど面白かった。片ヤン、原稿料はターコイズのコンチョをはめ込んだ為に、外された50セントのコンチョでイイよ(笑)。


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